熊本の地震が心配です…、一刻も早く穏やかな日常が戻らん事、お祈りしております。
今日は映画の話題です。
1964年公開の巨匠・内田吐夢監督による時代劇。吉川栄作の小説「宮本武蔵」を原作とした、シリーズ全5作の中の4作目。
京都の名門、京八流吉岡の御曹司、清十郎を打ち負かした武蔵は続けて清十郎の弟、伝七郎と雪の降りしきる三十三間堂で決闘する。
そして、京八流吉岡門弟との戦いはエスカレートし、一乗寺下り松で73人対1人の死闘の幕が開く…。
様々な人が演じてきた武蔵という国民的剣豪。
しかし、中村錦之助の武蔵ほど熱い武蔵はないだろう、剣の道に対するストイックさはちょっと引くくらい凄まじい。
獣のようだった武蔵の荒々しさが、様々な人の教えを受けて洗練されていく様子も面白い。今作では伝七郎を斬り伏せたあとの武蔵を、芸妓吉野太夫が「そなたは張り詰めた弦のよう、そのように張り詰めればいつか弦は切れてしまう」と諭す。
迷いを振り払うかのように剣を振るう武蔵の葛藤もまたシリーズの見どころだろう。
また、今では絶対に許可が下りないであろう、本物の三十三間堂でのロケシーンの美しさはさながら絵画のよう。いつもやけに明るい室内セットの現代時代劇に足りないのはロケだと思う今日この頃である。
そして、今作最大の見どころがクライマックス一乗寺下り松での死闘。
ここにきてカラー作品の本作がモノクロに転調する、現場に先乗りして入念に地形を調べ上げる武蔵。
そして、鉢巻を締め手裏剣を差し込むと「八幡!命あっての勝負!」(この台詞が大好き)と言い捨て、戦いに臨む。
手裏剣を投げて種子島を始末、一気に敵の本陣に斬り込み、大将に飾りあげられたまだ幼い源次郎を容赦なく斬り伏せる武蔵。
大将首を取った武蔵は勝利を得たと確信し、追いすがる吉岡門弟を斬り倒しながら、逃走する。
日本映画屈指の迫力みなぎる殺陣シーンは、モノクロからカラーに戻り、まるで鮮血のように赤いシダの葉の茂みに寝転ぶ武蔵の姿で幕を閉じる。
勝利のためなら幼子も斬り伏せる、求道者としてストイックすぎる武蔵の信念に痺れる一本である。そして、そんな映画内容に作用されて絵柄もいつもと変わって劇画っぽくなってしまった…。
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