空前の大ヒットを記録して、社会現象になった「君の名は」。

しかし、私はというと映画が公開されてもすぐに見に行く気にならなかった…、正直に言えば新海監督の作風が苦手なのです。嫌いではないのですが、どうも、苦手なんです。

 

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観た感想から言えば、大変面白かったし、相変わらず背景が綺麗だし、往年のモチーフ「すれ違う男女」というのも「ほしのこえ」の頃から一貫していて好感が持てる。

が、やっぱり私は苦手だった。

今風の爽やかな歌(RADWIMPS)が随所に挿入されるのだけど、その度に映画「レッドドラゴン」のオープニングで交響曲の音程が外れるたびに顔をしかめる、ハンニバル・レクター博士みたいな顔をしてしまった。

 

結果、「ピノキオ」で号泣できる私が、眼球を潤ませることさえなかった…。

これはいったいどうしたことか…。私の心が腐ってしまい、素晴らしいものを受け入れる器官が損なわれてしまったのだろうか…。

それとも場末の短編アニメーション作家に特有の商業アニメに対する、やっかみ、劣等感の表れなのだろうか…。

 

聞けば、中高生たちの支持が高いと聞く。なるほど、きっとむき出しの感受性をぶら下げて観れば、ワンワン泣けたことだろう。しかし、私も齢31歳、汚いものや人間に揉まれてきた私の感受性は厚い皮覆われてしまっている。

しかし、今を生きる中高生たちが休日にまだ手を繋いだことしかない恋人と観に行くのに「君の名は」は最良の選択と言えるだろう。

青春の1ページに書き記すのに価する美しいアニメ映画だったのではないだろうか。

そして、見終わった後は「よかったね」「まじ泣いた」なんて言いながらサイゼリアでドリンクバーを啜るのだ。素敵だ。

ポスターにもなった、あの階段で寿ビデオを撮影しようとしている人もたくさんいるんだろうなぁ…。やだやだ…。

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ふと、では、私は高校生の時、恋人とどんな映画を観に行ったかを思い出す。…ああ、思い出した。アダム・サンドラー主演、サタンの落ちこぼれ末っ子が活躍する映画「リトル・ニッキー」だ…。このコメディ映画を高校生の私は、恋人の頭に肩を貸しながら「頭って意外と重い…」とぼんやり思いながら観たのだった…。

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